「~夏空の光~」 堺東 (大阪女学院)
堺東高校さんの公演には終始何か目を引くものがあった。
まず前説。劇場全体を列車に見立て注意事項を述べていくため、まだ作品内に入ってもいないのに彼女たちの作り出す空間に引き込まれるようだった。
そして始まる本編。ジェットコースターのようにどんどん話が進み役者全員の生き生きとした演技が止まらない。だからなのだろうか、「見連川」と書かれた私たち観客にはまだ読み方も知らされていない看板が醸し出す存在感が風景として溶け込んでいて素直にすっきりとした気分を与えられる。
はじめは麻生愛海さん演じる綺麗な女性、星野奈津美の未練が主題かと思えば、中林雪穂さんの駅長、近田裕海さんの山田次郎の2人も元は「ホシ」であり、未練を抱えていると知らされ驚いた。
温厚そうでおっとりした話し方から一見頼りなさそうにみえるが一歩引いた立場から皆を見守る駅長、たまに意地悪なことを言ったりもするが頼れるお兄さんのような山田さん、大和撫子といった言葉が似合う奈津美。一見何の関わりも無さそうな3人の未練が共存し、そこに「見連川」の妹のような上田実咲さん演じる純粋で不器用な南河内光ちゃんや池田美緒さん演じる包容力のあるキャリアウーマン佐久間栞、態度のみが大きく敵のように扱われるがお調子者で憎めない高橋凜平さん演じる佐久間大五郎の夫婦が加わることで「駅」という狭い世界がとても広く温かいものに思える。
舞台全体がとてもきれいにまとまった印象だが窮屈なわけでなく広く感じた。音響・照明もまさに適材適所といった感じでそういうものも含め、80分ずっと芯の通ったものがキャスト全員の中にあったのだろう。きっとそれが未練であり、乗り越えた先にある未来だと自然に思わせられた。
出演者は女性ばかりで男性が1人しかいないとは思えない程に創り上げられた舞台、このような素敵なものを観させていただいて、堺東高校さん、ありがとうございました。
大阪女学院高校 樋口穂乃佳
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