「解き方不明のキャストパズル」 北摂つばさ ()

 7月30日、北摂つばさ高校さんの「解き方不明のキャストパズル」を観劇しました。

 物語の大筋は死刑囚である赤田が面会にやって来た牧師や研修生、事件の被害者の娘、さらには刑務官の過去や本音を知り自分の犯した罪と向き合い始めるというものです。まず私が思ったことはキャストの方々の台詞の言い回しや間の取り方がとても上手でまるで、リアルタイムで面会室の風景を見ているかのようでした。特に、赤田さん役の心情表現がとても巧みで最初は飄々とした態度だったのが話を聞いていくうちに自分が死刑になるという自覚が芽生え始め人の足音に怯えるようになる演技は見ていて圧倒されました。また、牧師役の人の台詞に聖書からの引用が幾つかあるのですがそれの言い方がとても力強く心に突き刺さりました。この脚本では中盤に「死刑によって救われる人はいるのか?」という問いかけがなされます。私はこの劇を観劇するまで死刑囚の死刑が執行されたことでやっと事件が解決し、被害者やその遺族も救われると考えていました。しかし、それはとても浅はかな考えかもしれません。仮にその事件の当事者が死刑になったとしても被害者が生き返ることはありませんし遺族の心の傷が癒えるとも限りません。そんなことを考えていると「死刑が本当に必要なのか?」とさえ思うようになりました。先進国の中で死刑制度が残っている国は数少ないです。必要のないものは廃止される。それは世の中でごく自然な摂理です。死刑制度が廃止されている国が多数あるのもつまりそういうことです。死刑以外にも加害者にしっかりと罪と向き合い償ってもらう方法があるはずだと今、私は考えています。また、物語のラストでは裁判員制度についても触れられていました。その幕での鬼池の台詞「あなたの解くパズルの解法は。」。国民であれば裁判員に選ばれる確率は皆同じです。「その時にあなたはどういった判決を下すのか?」その答えは誰にもわかりません。しかし、公正な目で判決を下すことが大切だと思います。

 最後になりましたが「死刑制度」や「裁判員制度」などといった難しいテーマが込められている脚本を演じ切ることができた北摂つばさ高校演劇部さんは、この劇をするにあたってとても勉強されたのだと思います。本当にお疲れ様でした。

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