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「ひととせ」 東海大付属大阪仰星 (阿倍野)

★東海大学付属大阪仰星高校さん「ひととせ」の観劇ブログを担当する阿倍野高校3年の稲本です。 一人劇ということで、舞台に立つのは場面転換から出演まで一人だけ。演劇をやっていれば分かりますが、少人数で最後まで舞台を回すというのは、とっても大変なことだったと思います。今回は、その大変さを微塵も感じさせない、完成された劇だと感じました。季節の移り変わりを、窓から見える木を入れ替えることによって表したり、最後に登場する二人目の登場人物『森谷 芽衣』のリボンが青色に変わっていたり。一人でやっているから大目に見ないといけない、と観客が気を遣う必要のない、周到な演出が素晴らしいと感じました。 次に言及したいのは、何と言っても一人ひとりの仕事です。音響や照明は、最低限必要なものを配置しながら、どれもが効果的で、無駄のない洗練されたものだったと記憶しています。また、この演出を加えれば観客はどう受け取るのか、という客観的な視点が強く感じられる素敵な仕事だったと思います。 そして、何といっても役者の仕事です。表情管理、身の振り方、声、純粋な演技力……。たった独りで舞台をやり通すということは、それだけ劇を背負うということ。誰のおかけでも、誰のせいでもなく、自分だけで演技する。そこには計り知れない孤独と、のしかかる重圧があったのではないかとお察しします。その責任を、高いポテンシャルと、確かな努力によって果たされていた、と私は感じました。むしろ楽しんで演技をされているようで、こちらも安心して楽しむことができました。特に私が伝えたいのが、文化祭の公演が叶わず、泣き出してしまうシーン。普段、底抜けに明るい彼女が、虚勢を張りながらも、息が上がってきて、ついには泣き崩れてしまう。観劇中、思わず魅入ってしまった大好きなシーン、演技の一つです。 演劇部最後の一年、新入部員獲得も、文化祭の公演も、創作脚本の受賞も、どれも一人で挑んで、どれも叶わない。しかし、その全てを前向きに進んだ彼女は「後悔はない」と高らかに宣言し、部室を去る。季節は新しい春を迎える。部員募集のビラを持った新入生が、"ドアノブは新しくしたはずなのに"、立て付けの悪い扉を通って部室に入ります。そこで彼女は、マネキンの首と、犬のぬいぐるみ、そして、机に置かれた一冊の台本を発見する……。 自分のした努力は、自分の預かり知らない...

「FLOAT」 長尾 (咲くやこの花②)

長尾高校HPF公演『FLOAT』を観劇して思ったことは、脚本がすごい。そして、そのものすごい脚本の良さを最大限に引き出し、表現している長尾高校さんはもっとすごい! まず、脚本の素晴らしさから書いていこうと思う。あの脚本には様々な社会問題が組み込まれていた。アスペルガー、ネット問題、コロナ、災害、ジェンダーなどなど。そんなにたくさんの社会問題を一つの、しかも1時間ほどの脚本に組み込むことなどできるだろうか。きっと、やってみようとしたら話の軸はブレ、上演時間は伸び、もっと複雑な話になり、お客様が十分に楽しめない劇となってしまうだろう。だが!『FLOAT』は周りと馴染めない少女、という話の軸はブレずに上演時間は約1時間、物語は簡潔に分かりやすく、しかも感動まで与えてくれる。なんて親切で素晴らしい脚本なのだろう。この脚本を書いたクラーク記念国際高等学校の方は、もう一生遊んで暮らしていてもいいと思う。 そして、そんな素晴らしい脚本を潰すこと無く、むしろその良さを最大限に引き出して倍増させていた長尾高校さん…大好きです!!まずは役者の方々。全員声が通ってて聞き取りやすかったです。マー子役の方。叫ぶところや、感情を込めているところ。声は潰れてさせているのに台詞は潰れていない、尊敬します...!あと髪の毛綺麗すぎませんか!?あの艶には驚きました…。そしてタチバナ役の方、個人的に一番好きでした。なんだか、クールで色っぽくて…ゲネプロではまだ幼さが残っていましたが、上演ではメイクをしていたおかげで色気というか艶めかさというのか…倍増されていて息を呑む美しさでした…!他にもフィジカルお兄さんやとらんぺっこやお兄ちゃんなどなど、皆さん凄く良いお芝居を見させて頂きました!そして、演出。もう…言葉に出来ないほど良かったです…!特に、傘を使うシーン。スモークを焚いて丁度センターの方にスモークが来たタイミングで、周りを囲うようにしていた役者さんたちが開いた傘を前に突き出す。そうすると、スモークが舞っていて…。あの時の感動は忘れられません。そして音響のタイミング、照明の切り替え、すべてが『FLOAT』の為にあるのではないかと思わされました。尊敬します…! 他にも好きなシーンや語りたい事などはたくさんあるのですが、長くなりそうなのでここまでとさせて頂きます。長尾高校の皆さん、素晴らしい演劇を本当にあり...

「FLOAT」 長尾 (咲くやこの花)

前曲でサカナクションのアイデンティティが流れていて、アスペルガーで『普通』について悩んでいる主人公に関係があるのかなと考えされられました。途中の曲でもこれは今海だからこの曲なのかなとか、この動きをしたいからこの曲なんだなとか考えられていて素敵だなと感じました。また、作品で使う曲のアーティストを統一していたのも次は何が流れるのか?というワクワクがあり楽しかったです。 円になり主人公囲んだり、椅子を囲んで教室を表現したり、傘を使って波を表現したり本当に道具の使い方が上手いなと終始感銘を受けていました…!!個人的に好きなシーンは、椅子の上たって周りから浮いているを表現している、地面に座って周りに合わせ生きている(=沈んでいる)この対比を表現しているシーンで凄く考えられていて面白いなと思いました!! 役者については本当に頭が上がりません。 どのセリフも聞こえてきて演技も自己満で終わらず周りにしっかり伝えてて、見せ方を分かっているんだなと感じました。 主人公の長セリフのところは本当に細々としているのにもか変わらず頭にするする入ってきて驚きました!!!ホールに負けることのない堂々とした演技どの役者の方も素晴らしかったです!! 演技も照明も音響もどれも夏にぴったりこの作品にぴったりでとても美しかったです!!私の高校ではこういった爽やかな演劇をあまりしないので少しずるいなと思ってしまいました(笑)爽やかで日常的な演劇は演技力や他の力が上手くないと退屈になってしまいがちですが、この作品は既存である台本でありながら長尾高校さんの色をうまく出せていとても強みだなと感じました。本当に公演お疲れ様でした!!

「さよならだらけだけど、」美原(桜塚)

この度、美原高校「さよならだらけだけど、」の観劇ブログを書かせていただきます。桜塚高校2年の山田です。 美原高校演劇部の皆さん、お疲れ様でした! 今年閉校してしまう、全校生徒75名の美原高校。もう数少ない部活のなか、まだ演劇を続けようとする部員たち。そんな、実際にこの1年で起こるであろう話をフィクションも交えてストーリーが動いていきます。 この作品を一言で表すとしたら " 笑いあり " 、" 涙あり " だと思います。典型的だと感じるかもしれませんが、ホントにこの言葉がしっくり来ました。1箇所だけではなく色んな場面で観客が泣けるシーンを作っており、後半は特に感動しました。 呼吸をするのを忘れてしまうほど真剣に見てしまった私のお気に入りのシーンは、モニターが「鈴木」で、鈴木自身の心の中にある葛藤と、その気持ちに縛られる人生から逃げるために頭を抱える場面です。一瞬の場面ではありましたが、迫力や怖さがあり、本当に心に刺さりました。 笑えるシーンの一部で、部室でOGを含めてクイズしている場面や最後の演劇部で答えるクイズのところは全員が心の底から楽しんでいるなと分かる笑顔で、見ている側も自然と笑顔になることができました。 小道具が多く、モニターを使うなど、他校さんには無い美原高校さんだけのオリジナリティを感じましたし、モニターが使われていることで、暗転のときも良い目立ち方をしていたなと感じます。 音響の音の入りや照明の場面転換のタイミングなど、見ていて全てが完璧だなと思いました。 美原高校の皆さん、今回の公演 本当にお疲れ様でした! この度、美原高等学校さんのHPF公演「さよならだらけだけど、」の観劇ブログを書かせていただきます、桜塚高等学校1年の伊原です。 まず初めに、皆さん公演お疲れ様でした! とても違和感のない自然な演技で、思わずストーリーにのめり込んでしまいました…! 感情を顕にするシーンや、勇気を振り絞って意見をするシーン等とても伝わりやすく、鍛え上げられた演技力が発揮されていたと思います。 日常の一部を切り取った様な場面から、大きくストーリーが動く場面への流れ・テンポもとても良かったです! 特に別れや閉校、幸せや人間関係に対する等身大の想いが見ている側に伝わってきていて、心を動かされました。 ''幸せ...

「あれも これも それも きっと ぜんぶ わたし」豊島(箕面)

豊島高校さんの観劇ブログを書かせていただきます、箕面高校二年生の金子です。 まず初めに、豊島高校演劇部の皆様、公演お疲れさまでした!  素晴らしい劇を観させていただき、ありがとうございました! コミカルなシーンはどれも面白く何度も笑わせていただきましたし、シリアスなシーンでは人物間での対立や意志の違い、変化といったものが丁寧に描かれていて、観ていて本当に面白かったです!  私のお気に入りのお笑いは "新米"に対しての"備蓄米"です。 さて、話は演劇部が文化祭の舞台公演に向けた稽古を行っている場面から始まります。その練習をしている台本というのが、昨年豊島高校さんがHPFで上演された『サマー婆ケーション』の冒頭のシーンだったんです。私事にはなってしまうのですが、昨年の『サマー婆ケーション』を観劇していた私は、豊島高校演劇部さんの代替わりを感じられて感慨深くなってしまいました。 話は、文化祭の台本をめぐって進んでいきます。突如、生徒会によって文芸部・漫画研究部との合同公演をすることになった演劇部の脚本、あおいは各部の意志を取り入れながら脚本を練り直していきます。融和し難い要求に悩まされるあおいの姿は、観客に共感を誘うものでした。その共感は、あおいの"自分の意志を強く言わない"という性格から来ているのだと思います。台詞の間や所作、表情に"演劇部の常識"が通用しない他部活からの要求に困惑した様子が映し出されていました。 なんとか台本を仕上げ、稽古を始めます。稽古の準備を進める様子から、劇中では描かれていない普段の演劇部の雰囲気が感じられました。 役者がそろい、稽古を始めます。しかし、各部は満足出来ておらず、不満から対立が起き、それが激化していきます。感情の昂りや周囲の動揺など、舞台役者一人一人の所作に見応えがあり、どこを見ていようかと悩んでしまいました。その位、舞台全体に"見る価値"を与える演者さんは本当に凄いと思います! あおいは難しい状況の中、台本の練り直しを進めます。ここで、あおいが何故"自分の意見を言わなかった"のかが判明します。あおいの性格をただ"そういう人"というだけで済ませず、頭の中での対話から理由を導き出すという演出に感激...

「わたしのつばさ」 関西学院千里国際 (関西創価②)

関西学院千里国際中等部高等部さんの「わたしのつばさ」の観劇ブログを書かせていただきます、関西創価高等学校 2年築山七海です。千里国際演劇部の皆さん、公演本当にお疲れ様でした!!結論から言ってしまうともう最高でした! 芝居の簡単な内容といたしまして、舞台は学校としては初参加であり、高3にとっては卒業公演にあたるHPF公演。高校3年生である真田和津は既に主人公として決定していた演劇部マドンナである同じく高校3年生である三浦舞香に対し、主人公の座をかけた部活内総選挙戦を申し込みます。演劇部創設者である2人の関係性や部員達のイザコザ、卒業公演や演劇部の在り方、そして語られるは過去から未来へ。様々な方面に対する愛情のこもった劇でした。 パフォーマンスなどの出来が毎度良くて、観客と一緒に盛り上がれるようなノリが作られていたので80分間、最後まで飽きずにハラハラニコニコと観劇していました。演出が面白くて、個人的には序盤からアニメのオープニング映像のように、キャスト等が書かれた布をかかげて流れていく姿を見た時には笑いが止まりませんでした。それに、演技だけでなく歌も極められるなんて...尊敬の眼差しを向けずにはいられない! まず、なんと言っても素晴らしい点は演技の巧みさです!それぞれ違う味を持ったキャラクターをブレずに全員が最後まで演じ切っており、役との整合性がとても高いと感じました。内1人を例に挙げて書かせていただくと、妬みと憎悪を上手く感情に乗せて演じている巻機山あささんは強く印象に残りました。客席側に語りかけながらも動作や表情にしっかり全ての気持ちが乗っていて、劇場内に響き渡る強い声が心にグッと来るものがありました。そして役者全員が楽しく笑顔で演じていたのが何よりも1番です。 舞台装置には無駄がなく、幕が上がって観客がすぐに舞台を把握できた他、アクティングエリアがしっかりと作られていたので大人数が一気に舞台上にあがれたり、役者も大きな動きを可能となっていたのですごく綺麗だと感じました。 「わたしのつばさ」というタイトルを聞いて、誰か1人が決断して進んでいく姿を描く物語かと予想していたのですが、2人で1つの翼として今までの経験や将来への不安も共に進んでいこうとする姿を表したタイトルであると観劇後に分かり感動しました。主人公の2人だけでなく、他の部員全員がしっかり救済されるような形...

「わたしのつばさ」 関西学院千里国際 (関西創価)

この度、関西学院千里国際高等部さんの「わたしのつばさ」のブログを書かせていただきます、関西創価高等学校3年藤原忠です。素晴らしい作品をありがとうございました。本当にお疲れ様でした。 劇の内容は2025年度卒業公演に相応しいお芝居で劇中でこのHPFの卒業公演の主演を春風舞香(三浦さん)がするか、藤原和津(真田さん)がするかを選挙で決めるというものでした。主演をするために生まれてきたかのようか春風舞香に藤原和津がコミカルに立ち向かっていく姿が面白く、見ていて楽しい作品です。 はじめの印象としては、まず演者が全員声が良く通り、かつ綺麗で尚且つテンポが良かったです。普段のお稽古の完成度と仲の良さが滲んでいるなと思います。 劇の内容が今までの実際の演劇部の歴史を踏襲していて、その分役者全員に気持ちがしっかり乗っていたのだと思います。 そしてキャラクターが一人ひとり役割が立っていて、何をとっても完璧な春風舞香とそれを支持する部員たち。だからこそ、そこに一人立ち向かう和津が光る。中学の時に部活を立ち上げた2人の対比。そして巻き込まれる同期の2人。いい役がもらえない瀬川優介と高一からの途中入部で役を貰えない、優秀な兄と舞香と同じ名前をもつ妹尾苺伽が主演2人への劣等感や嫉妬を持っていたり。後輩の部長副部長も舞香に心酔する飛鳥悠太と舞香に嫉妬し和津を支持する巻磯山あさ。 全員が上手く絡み合っていてキャラクター性だけでもいつまでも見れるような脚本でした。 裏方は転換がとても自然で、照明音響がとてもドラマチックに綺麗になっていて観るストレスが全くなかったです。 タイトルの「わたしのつばさ」が、はじめは舞香のものだったのが、最後で舞香と和津の「わたしたちのつばさ」になるのがとても感動しました。3年生のみなさん。本当に今までお疲れ様でした。これから先も演劇を好きでいてくれたらと思います。僕は舞香さんのTikTokをフォローしようと思います。 本当に素敵な時間を素敵な作品をありがとうございました。 関西創価高等学校 藤原忠(3年)